公共政策学における問題設定の重要性
正月休み中に、今更ではありますが以下の本読んでました。
入門 公共政策学 - 社会問題を解決する「新しい知」 (中公新書)
- 作者: 秋吉貴雄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/06/20
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (7件) を見る
公共政策に関心がある人にはオススメの本なのではないでしょうか。
「政策問題の発見と定義(第2章)」→「解決案の設計(第3章)」→「政策の決定(第4章)」→「政策の実施(第5章)」→「政策の評価(第6章)」
という政策のプロセス毎に説明がなされており、政治・社会問題等についてレポートや卒論等を書く際の指針として活用できそうです。
このあたりの説明をわかりやすく書かれている新書はこれまであまりなかったので、この分野に関心のある人はまず一読してみると、概要が分かるかと思います。
web中公新書に本書に関する秋吉先生のインタビューも掲載されてますので、ご参考まで。
やはり以下のコメントが重要なのかなと。
公共政策学というと、どうしてもいかに解決策をつくるか、という点に注目が集まりがちです。しかし、そもそも問題がどのように発見されるか、そしてどのようなフレームで捉えられ、どう定義されるのか、といった始まりの部分が重要です。
どの学問もそうですが、いかに問題設定をするのか、というのがやはり重要で、本書の中でも「少子高齢化」を題材に問題設定の仕方を説明しています。
この問題設定の重要性やそのアプローチをどうするかはいつも悩みますね。この点で、ちょうど正月にアマゾンセールで以下の本を電子書籍を購入して、改めて読み返していましたが、分野は違うけどやはりアプローチは同じだよなと思いました。
本書では、今本当に答えを出すべき問題=「イシュー」を見極めることの重要さが指摘されていますが、ベストセラー本だけあってその点が非常に分かりやすく書かれています。
イシューを見極めるためには「実際にインパクトがあるか」「説得力あるかたちで検証できるか」「想定する受け手にそれを伝えられるか」という判断が必要となり、ここにはある程度の経験と「見立てる力」が必要になる。
という指摘にもあるように、イシューを見極めるための経験と「見立てる力」が重要ということで、研究論文を書くという観点からいえば、数多くの先行研究を読み込むとともに、指導教官や諸先輩方とのディスカッションにより見立てる力を培って行く必要があります。
冒頭の秋吉本に戻ると、公共政策学におけるイシューの見極めには「フレーミング」が重要であると指摘されています。
社会における問題が発見され、注目されると「政策問題」として認識される。しかし、注意しなければならないのが、政策問題と認識されても、解決案となる政策は自動的に検討されないということである。問題をどのような枠組みで捉えるかという「フレーミング」次第で、問題への対応は異なってくる。公共政策学において、このフレーミングは非常に重要である。(p.47-48)
このあたりは本当に自分で考え抜かないと身につかないスキルなので、ひたすら考え続けていかないとですね。。
なお、本書ではフレーミング後のプロセスとして「問題構造の分析」フェーズがあり、階層化分析やKJ法などの説明がなされていますが、このあたりはさらっと書かれているので、以下の本も読んで様々な問題分析手法を覚え、自分で色々と手を動かしながら考えてみるのが良いかと思います。
社会人として仕事をする上で参考になりそうだなと思って手に取った本も、内容的には研究にも応用できるノウハウがたくさんかかれており、色々と関連性が見えてくることがあります。
仕事をしながら博士課程に通っている分、研究に充てられる時間は限られてしまうこともあるため、その点は社会人になって身につけた生産性の高いアウトプットを出す技術を上手く研究にも適用しながらやっていかなければならないなと思います。
今年はチャレンジの1年
明けましておめでとうございます。
毎年同じように、2017年もあっという間にも終わってしまい、2018年になってしまいました。
2017年は博士課程での研究に集中するためにも、仕事の方の環境を整える1年になりました。2018年は研究の方に集中し博士論文を書き上げるためのネタ集めに力を入れて、来年本格的な執筆に入れるよう準備を進めたいと思います。
本ブログ1本目の記事ということなので、具体的な研究内容等やバックグラウンド等も説明が必要ですが、それはまたおいおい。
とりあえずここ10年ほど本格的な個人ブログは書いていなかったので、適当に書き始めながらまたのんびり書き進めていきたいと思います。
とりあえずは、この正月休みに読んでいる本の紹介から。
約500頁の大著でまだ全部読み切れていないですが、国鉄分割・民営化に関する当時の政府や国鉄、組合等の具体的なやりとりが詳細に描かれており非常に面白いです。30代の自分からすると組合がここまで力を持って、ストをバンバン実行していたということが正直今日の社会状況からは全く想像できなかったのですが、本書を読むとその力関係、権力構造等も分かり、非常に面白いです。
政治・行政を専門に研究する立場からは、昭和56年3月に発足した第二臨調発足に向けた鈴木首相・中曽根行政管理庁長官と会長に指名された土光敏夫や瀬島龍三のやりとり等が書かれた第4章は特に勉強になりました。
審議開始に当たって専門委員に対する中曽根長官(当時)のメッセージが明確で良いですね。
第一臨調は三年かけてすばらしい答申をつくった。ところが、あまりにすばらし過ぎて、理想を追いすぎてしまったものだから、実行できなかった。今度の臨調の答申は、政府が『汗をかけばのめるような案』にしてもらいたい。第二点はどういう順序でやるのか、実行に至るステップを示して欲しい。(p.200)
関連して、国鉄分割・民営化にあたっては、加藤寛が部会長としてその方向性を描いたという点もかなり丁寧に説明されており、私達の世代で人気になった「総合政策」の生みの親としても知られる加藤先生の当時の想いを感じ取ることができました。
本書はまだ読み途中ではあるので、続きは読み終わった後にでも追記するかもしれません。
というわけで、こんな感じで今年から少しずつ情報発信していきながら、研究の方も進めていきたいと想います。
今年もよろしくお願いいたします。