社会人博士の研究メモ

働きながら博士課程で研究する者の備忘録

雇用のトリレンマ

「〜のトリレンマ」シリーズ?ということで、本書では、「雇用のトリレンマ」について書かれていたのでメモ。 

デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか

デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか

 

 将来の雇用の機会は、仕事を自動化するテクノロジーと労働力の余剰によって大きく制約されるだろう。この二つの要因が重なって、雇用のトリレンマの状況に追い込まれるだろう。新しい仕事の形は、(1)高い生産性と高い給料、(2)自動化に対する抵抗力、(3)大量の労働者を雇用する可能性、という三つの条件のうち、最大でも二つしか満たせない可能性が高い。(p.90) 

トリレンマが解消されるとすれば、それは超専門家社会が到来したときだ。ウェブの市場拡大力、売り手と書いてを結びつける力が、世界に数十億人いる労働者の大半が小さくとも食住をまかなえるだけは稼げるニッチを見つけるところまで行きついた世界だ。ただしこれは結局、ソフトウェアでは実現できない。この不思議な面白い世界に希望を持つことはできるが、おそらくあまり期待するべきではない。

もっと現実味のある未来のシナリオが次のようなものだろう。テクノロジーが産んだ新しい機会は、創出する仕事の数より破壊する仕事の数のほうが多い。ただし、大半の消費者にとって不可欠な商品とサービスのコストは下がるだろう。この未来の世界は今より良くなる可能性があり、労働者の賃金は伸び悩んでも、実質的な生活水準は上がるかもしれない。

だがこのような未来が実現するには、社会保障制度の大きな進化がほぼ必須だ。仕事を奪い合う労働者の数が増えれば、特別なスキルのない人々の賃金は頭打ちになるか下がらないだろう。(p.105)