社会人博士の研究メモ

働きながら博士課程で研究する者の備忘録

メカニズムデザインとプライバシー

先日取り上げた「モラル・エコノミー」から追加でメモ。先日引用したリベラルトリレンマに関する説明に入る前のメカニズムデザインに関する部分。

モラル・エコノミー:インセンティブか善き市民か

モラル・エコノミー:インセンティブか善き市民か

 

見えざる手を助けるためには、経済において政府が役割を演じることを不可避的に必要とするが、メカニズム・デザインに関してはビッグ・ブラザーのようなものは存在しない。そして驚くべきことだが、まさにこれが問題となるのである。

その理論は、政策立案者の影響力の及ぶ範囲が必然的に制限されていることを認識することから始まっている。メカニズム設計者の仕事は、メカニズムと呼ばれる契約、所有権、その他の社会的ルールの集合を提出することであり、それは市場の失敗を軽減したり、排除したりするのである。しかし、現実主義と個人のプライバシーの尊重の両者は、たとえ諸個人に関する重要な情報が私的にのみ知られ、したがってメカニズム設計者によって、インセンティブ、制約、あるいは提案される政策の他の観点を実行するのに使用されることはできないことを要求する。

この情報のプライバシーという制約は、設計者が市場の失敗をもたらす理由を簡単に取り除くことができるというユートピア的解決を排除する。もし、提案されたメカニズムが、たとえば、人がどれだけ懸命に働くかということに関する情報や、あるいはある財やサービスに対する売り手と書いての真の評価に関する情報を使用することができるならば、まさにその同じ情報が、取引の当事者の間で完備された私的契約を記すのに使用されたことだろう。そして、その契約は、メカニズム設計者が呼び出され、対処することを必要とされて市場の失敗を除去しうるものであったはずである。 (p.151-152)

メカニズムデザインにおける情報のプライバシーという制約の部分がよく分からなかったので、もう少し理解を深めたいと思っています。

ネットで検索する限り、あまり日本語文献ではこの論点を検討している文献見つからなかったのですが、グローバルでは結構議論されているようですね。